2016年4月30日土曜日

Uberの体験とユーザーエクスペリエンス設計雑感

Uber(「ユーバ」ではなく「ウーバ」と発音するらしい)を使って、ユーザーエクスペリエンス設計とは何、初めて腑に落ちたような気がするので、それをまとめたのが以下の記事となっています。Uberが何であり、具体的にどう使うかはこちらで。

先日イギリスに行った際に、ロンドン市内のホテルからヒースロー空港までUberのタクシーを使った。

まず、Uberアプリケーションをダウンロードし、クレジットカードを登録する。次に行き先を入力(あと乗車人数も入力できたかもしれないが)。すると、近くを走っている車から連絡がくるので、運転手の名前を確認し承諾する。車のナンバーが教えられて、運賃もその時点で確定する。金額は普通のロンドン黒タクシーより安いはずだが確認したわけではない。なお、車の豪華さや大きさで運賃が異なってくるらしい。複数の車から連絡がくるので、運転手さんの評判を確認して選択するステップもあるのだろうが、今回は最初に連絡があった車にした。

3分ほどで車が到着。車が近づく様子も地図上で確認できるのでどの車か間違えることはないが、念のためナンバーも確認する。メーターなどのタクシー的な設備は一切ない普通の車だった(スマートフォンがホルダーにセットされているだけ)。あとは乗車して降りるだけである。支払いや領収書の発行もない。なお、領収書はWebサイトからダウンロード可能。降車後に運転手の評価をするが、完全安全運転だったこともあり、最高点を差し上げた。

箇条書きで書くと、
  1. 行き先入力(スマートフォン上)
  2. 車選択(スマートフォン上)
  3. 金額と車のナンバー確認(スマートフォン上)
  4. 車を確認して乗車
  5. 降車
ということになる。

せっかくなので、Uberで仕事をするというのはどんな感じなのか、運転手さんにいろいろたずねてみた。

Q1.運転手は客を選べるのか?選ぶための客の個人情報を見ることができるのか?
A1.ノー。客の人種や国籍は確認できない。

Q2.車は自分の所有物だと思うが、車の掃除やメンテはUberから指導があるのか?
A2.ない。評価につながるので自分でしっかりやる。

Q3.もうかる?
A3.昔は普通のタクシー(黒タクシー以外にも別の会社がある)で仕事をしていたが、車のメンテナンス費用などを考慮しても、取り分は大きい。黒タクシーの客待ち行列を見ろ。効率が悪すぎる。位置的に最適な客を知らせてもらえるので最高だ。これが競争原理でありキャピタリズムじゃないか!

Q4.イギリスならどの都市でも使える(オックスフォードではUber車が見つからなかった)?
A4.現時点ではロンドンを含めて5都市のみ(列挙されたが忘れた)。ただ、客を運んだ先のUber車が使えない地域で別の客をひろうことはある。

Q5.とんでもなく安全運転だがそれはどうして?
A5.事故をしたら困るのは自分なので、安全運転するしかない。

Uber、個々の要素技術は特に新しいものはないが、統合されたサービス(顧客視点からだとエクスペリエンス?)としては間違いなく「イノベーション」である。特に「評価」という「競争原理」が組み込まれているので、自然とサービス品質が向上する。あと、Uberにとっては、乗車する客だけではなく、運転手もユーザーとしてとらえて、そのエクスペリエンス設計をしているのだろうと感じた。

ここからが本題である。

ユーザーエクスペリエンス(UX)という単語をよく聞くが、今まで正直その意味合いがよくわからなかった。しかし、今回Uberを使って、なるほどこれは客と運転手の「経験」をよく「設計」してあるな、と感じたのである。そして、「設計」のポイントはどこにあるかというと、「限られた選択肢の中から選べる」ということにつきる。UXというと「快と不快」のような説明をされることもあるが、「あまり考えずに簡単な選択肢の中から選択できる」ことは、「実際には受動的な行為であってもほんの少しの能動性があることで脳が快を感じるのだろう」というのが自分の結論である。

加えて強調したいのは以下の3点である。

1.ユーザーエクスペリエンス設計は事業の設計そのものであり、ユーザが使うインターフェースの設計は一部であることを痛感したのであった。アマゾンなどの買い物体験も大胆にユーザーエクスペリエンスが再構築されているはずなのだが、あまりに慣れ過ぎてしまってもう何も感じなくなっている。Uberでユーザーエクスペリエンスを強烈に意識したのは、普段の「タクシー経験」との差と比較してずいぶん異なっていたからである。

2.ユーザーエクスペリエンス設計のいきつく先は、システムとやりとりするためにUIに接する頻度を可能な限り減らすことになるだろう。ゼロにできるならゼロにした方が良い。

3.良くも悪くも日本では「デザイン」というと「装飾的要素」が想起されてしまうことが多いので、デザインと言う言葉ではなく設計と称したほうが、誤解は減るのではないか。つまり、「ユーザーエクスペリエンスデザイン」ではなく「ユーザーエクスペリエンス設計」または日本語だけで「利用者体験設計」とした方が無用な混乱は減る。

Uberの運転手さんに車の自動運転が実現すれば仕事がなくなりませんか、という質問をしたかったのだが、質問しないほうが良さそうな気がしてやめておいた。